76

世界樹の短文「今日のレイヴナズ5」

「樹海には蟹が埋まっちょる」
〜或る老レンジャーの遺言〜

蟹だよな。
千年の蒼樹海で採掘されたのは、でかい蟹の肢だった。
天下のシリカ商店に持ち込めば職人ギルドが蠢いて便利アイテムにはなるんだろうけれども…。
「その前に」
パーティーを見渡すとなぜか視線がこちらに集中している。
レンジャー、それは飯を調達する仕事。
「食ってみろ…と?」
一斉に頷く。
「いやいやいやいや、だってこの樹海、青いしキノコ状の鮮やかな胞子体がにょきにょきだし、第一埋まってたものだし」
樹海で食中毒などしゃれにならない。
「ピータン」
カスカ師匠が呟く。
「なるほど、そういう調理方法もあるわけだし!」
メディックらしからぬ発言をレジーナが勢いよくする。
「ちょっと待て!調理って、誰が??いつ??目的は??」
必死で抵抗するも、パラディンのヒーセ男爵と、ソードマンのフェレスに両腕を押さえられる。
「蟹のキトサンも一定量を超えると、毒物として体は認識してアレルギーがっ!!だから食べ放題の蟹は、ある一定量しか入らないという豆知識!!」
それらの金言はことごとく無視されて、でかい蟹の脚が目の前に突き出される。
「大丈夫、一定量超えなくても毒は毒だし」
レジーナはカースメーカーとして戻ってきそうな気がする。

施薬院のベッドはハーブの匂いがした。
そんな今日のレイヴナズ。

[mente]

作品の感想を投稿、閲覧する -> [reply]