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ガンズ・パピ−1-4-2
- 2009-01-29T22:29:57
- れもら乃輔
「ガンズ・パピー」
第一話、「Open Fire」
第四章、「野良犬一匹」(2)
キチキチと、金属と陶器が擦れ合う、甲高い耳障りなすっげー鳥肌ものの音が、「バレット」の店内に響きわたる。
唸り声二つ付きで。
食事時の店内は満席、のはずなのだが、当たり前のように僕らのテーブルの周りは、バイオ・ハザード(生物学的危険区域)になっている。
僕らのテーブルの上には、無惨にも食い散らかされた料理の数々が横たわる。それはもう、恐ろしい迅さだったと、後に語ろう。
「ぎちぎっぢぢっ。」
皿の上に残った、最後のハンブルグ・ステーキの1ピース目掛けて、同時に繰り出されたフォーク。
見事に空中で櫛同士が噛み合い、押しつ押されつの攻防が繰り広げられている。
「あ、モカ、もう一杯。」
すっと手を挙げて、のんきに注文したのは、リュグマンさんだ。
「アスキ、食べないのかい?」
「あぁ、この状況で、ですか?・・・」
僕らは4人でテーブルに着いている。
僕とリュグマンさんは差し向かいなので、チャンバラはちょうど僕らの間で行われている。
「ナッちょと、アスキ!コレ、こいつ邪魔っ!!」
はい、ミラだねぇ。
「くいもんに関しては、例え師匠のお仲間でも、譲れねえんでさあっ!!」
彼、無謀だ。素人強盗から、押し掛け弟子(未承認)でも飽き足らず、ミラに食事関係で勝負を挑むとは。
「これは、ワタシの、ヲ肉だっ!!」
やはり、ミラが押し切り、押し込んだところでスッと回転させて、噛み合うフォーク同士を外し、返す刀で、いや、フォークで最後のヲ肉を掠めとる。
あれだ、基本は「切り落とし」だな。
「ああ、俺のニクがぁ・・・。」
「フェン、10天体キュビト早いわは。」
言わせてもらえば、僕のお皿のハンブルグ・ステーキだ。それに天体キュビトは距離だし。
最初からこの調子で、テーブルに料理が出るなり、右か左に持っていかれ、僕はただ呆然とするだけだった。
リュグマンさんは、相変わらず茶とコーヒーだ。
「まあ、いいか、こんなに腹一杯くいもん詰めたの、久々だし。」
弟子(未定)の彼はそう言うと、お腹をさすりながら、満足そうに椅子にもたれかかる。
「あれ、師匠って小食なんすね?」
彼、天然か!?
「アスキは、ワタシのおやつ代、ドロボッたので、メシ抜きの刑になっているだけ。」
うお、いつの間に!?
そう言えば、ミラ、いつもよりフォークさばきが速かった・・・。
食べ物の恨みは、オソロシーね。
「ははっ、それじゃ俺と師匠と、同じ穴のキジムナーっすね?」
なんで、おきなーの妖怪モンスターの名前がそこで出る。
やばい、前にも増して頭痛の種が増えている。
今、やらなきゃいけない事は、あのおじさん、ウィルさんの決闘の事だ。
「そういえば、君、名前は?」
あ、そうだ、弟子(未未定)彼の名前聞いていない。流石、リュグマンさん。
と、急に彼が椅子から立ち上がると、カカトをカツッと鳴らして直立し、とったポーズは、敬礼っ!?
「ハッ、自分は
<連邦警察凶悪犯断罪課、執行班>
の新米で、グレイプと申します!」
・・・・・・・・。
「ふへぇっ!!?」
変な声出したのは、僕だ。
だって、そうだろう?
しかし、驚いたのは僕だけではない様子で、「バレット」の店内の空気が、一気に張り詰める。
って、警察が強盗するなよ。
人生は奇怪だ。
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