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ガンズ・パピ−1-4-2

「ガンズ・パピー」



第一話、「Open Fire」



第四章、「野良犬一匹」(2)



 キチキチと、金属と陶器が擦れ合う、甲高い耳障りなすっげー鳥肌ものの音が、「バレット」の店内に響きわたる。

 唸り声二つ付きで。

 食事時の店内は満席、のはずなのだが、当たり前のように僕らのテーブルの周りは、バイオ・ハザード(生物学的危険区域)になっている。

 僕らのテーブルの上には、無惨にも食い散らかされた料理の数々が横たわる。それはもう、恐ろしい迅さだったと、後に語ろう。

「ぎちぎっぢぢっ。」

 皿の上に残った、最後のハンブルグ・ステーキの1ピース目掛けて、同時に繰り出されたフォーク。

 見事に空中で櫛同士が噛み合い、押しつ押されつの攻防が繰り広げられている。

「あ、モカ、もう一杯。」

 すっと手を挙げて、のんきに注文したのは、リュグマンさんだ。

「アスキ、食べないのかい?」

「あぁ、この状況で、ですか?・・・」

 僕らは4人でテーブルに着いている。

 僕とリュグマンさんは差し向かいなので、チャンバラはちょうど僕らの間で行われている。

「ナッちょと、アスキ!コレ、こいつ邪魔っ!!」

 はい、ミラだねぇ。

「くいもんに関しては、例え師匠のお仲間でも、譲れねえんでさあっ!!」

 彼、無謀だ。素人強盗から、押し掛け弟子(未承認)でも飽き足らず、ミラに食事関係で勝負を挑むとは。

「これは、ワタシの、ヲ肉だっ!!」

 やはり、ミラが押し切り、押し込んだところでスッと回転させて、噛み合うフォーク同士を外し、返す刀で、いや、フォークで最後のヲ肉を掠めとる。

 あれだ、基本は「切り落とし」だな。

「ああ、俺のニクがぁ・・・。」

「フェン、10天体キュビト早いわは。」

 言わせてもらえば、僕のお皿のハンブルグ・ステーキだ。それに天体キュビトは距離だし。

 最初からこの調子で、テーブルに料理が出るなり、右か左に持っていかれ、僕はただ呆然とするだけだった。

 リュグマンさんは、相変わらず茶とコーヒーだ。

「まあ、いいか、こんなに腹一杯くいもん詰めたの、久々だし。」

 弟子(未定)の彼はそう言うと、お腹をさすりながら、満足そうに椅子にもたれかかる。

「あれ、師匠って小食なんすね?」

 彼、天然か!?

「アスキは、ワタシのおやつ代、ドロボッたので、メシ抜きの刑になっているだけ。」

 うお、いつの間に!?

 そう言えば、ミラ、いつもよりフォークさばきが速かった・・・。

 食べ物の恨みは、オソロシーね。

「ははっ、それじゃ俺と師匠と、同じ穴のキジムナーっすね?」

 なんで、おきなーの妖怪モンスターの名前がそこで出る。

 やばい、前にも増して頭痛の種が増えている。

 今、やらなきゃいけない事は、あのおじさん、ウィルさんの決闘の事だ。

「そういえば、君、名前は?」

 あ、そうだ、弟子(未未定)彼の名前聞いていない。流石、リュグマンさん。

 と、急に彼が椅子から立ち上がると、カカトをカツッと鳴らして直立し、とったポーズは、敬礼っ!?

「ハッ、自分は



<連邦警察凶悪犯断罪課、執行班>

 の新米で、グレイプと申します!」

 ・・・・・・・・。

「ふへぇっ!!?」

 変な声出したのは、僕だ。

 だって、そうだろう?

 しかし、驚いたのは僕だけではない様子で、「バレット」の店内の空気が、一気に張り詰める。

 って、警察が強盗するなよ。



 人生は奇怪だ。



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