90

ガンズ・パピー1-4-1

「ガンズ・パピー」



第一話、「Open Fire」



第四章、「野良犬一匹」(1)



 その後、僕はたまたま(だろうね?)出会ったリュグマンさんに、「ハウス」への道を聞いたけど、今日はなんと定休日だそうだ。どうりで、決闘関連の情報が無いわけだ。というか、なんだよ、定休日って。

 でも、それだから街にいつもの緊張感がなくて、こうして大勢の人が市場で買い物してるんだろう、とも思う。

「今日はね、アッサムの良い茶葉が手に入ったんだ。」

 リュグマンさんは嬉しそうに、軽く2、30個はある缶の山を抱えている。一つの缶は、大体ツナ缶の二倍だと思ってもらえれば、解り易いかも知れない。それが山になっている。これ、僕には持てないな。腕のリーチと上背のあるリュグマンさんだから、まだ顔が横からでも見えるんだな。

 そして、僕たちはそのまま、ミラがぶーたれて待っているだろう「バレット」へ、二人で、行きたかった、のに。

「兄(あに)さんっ!お持ちしやスっ!」

 といって、例の素人強盗がリュグマンさんの缶を強引に受け取るが、それが精一杯な様子で、膝が完全にくの字以上に曲がって震えている。

 なんなんだ?この人は。

「どーすか?おれみたいなんがいると、便利っしょ!?」

 笑顔で言ってるけど、実際は余計な手間を取らせてる事に気づいているのか、いないのか。

 困惑した僕からの視線に気づくと、ニカッ!と今時歯をきらんとさせて、僕にアッピールしてくる。

 あ、気づいていないな。絶対・・・。頭痛がする。

 いくら、強い僕に華麗にのされたからって、直ぐに弟子入りとか考えるかな?

 因みに、最初にちゃんと断った。

「弟子とか、そんなの全然解らないし、強盗はやったことがないので、今回は縁がなかったという事で。」

 これほど完ぺきな断り方なのに、理解されなかったみたいだ。

 リュグマンさんが可笑しそうに、「話だけでも聞いてあげたらどうだい?」なんて、無責任なこと言うから、素人強盗の彼、はりきっちゃって。

「お供させて頂きやス!!」

 と、敬礼までする始末。まあ、しょうがないか。あの領域は教えられるものじゃ無いって、ちゃんと解ってもらえれば、諦めるだろう。

 しかし、彼、汚いな。まずはどこかでシャワーかなんか浴びてもらおう。「バレット」のような食事を出す場所には、最低限臭いとかなんとかきれいにして、行くべきだろう。

 なんか、野良犬拾って連れ帰る時の気分にも似ているような、そんな気持ちだ。

「師匠!笑った顔もイカス!!」

 シッポ振り過ぎ、減点3。



 人生は奇怪だ。



[mente]

作品の感想を投稿、閲覧する -> [reply]