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ガンズ・パピー1-3-4
- 2009-01-29T22:27:21
- れもら乃輔
「ガンズ・パピー」
第一話、「Open Fire」
第三章、「K・K・K」(4)
(S&W M64 2inch)
スミスアンドウェッソンのリボルバー、カート式6連発ダブルアクション、銃身が短く携帯性に優れていて、隠し持って強盗するにはぴったりだ。
まさにそれが、僕のコメカミに突き付けれられている。
クーとクラックスは既に完了済みなので、あとはトリガーを牽き絞り、クランと鳴ったら、38口径の弾丸がこの素晴らしい性格と明晰な頭脳を台無しにする。それは、全人類にとって、今は何人いるか知らないけど、凄い損失だ。
自分で言う分には、ほっといて欲しい。
「おら、早く出すもん出せよっ!」
コメカミにぐりっと銃身が押し付けられる。
カッチィーン、と来たぞ。
強盗にだって、いくらかは礼儀ってものがあるんじゃないか?それに、出し易い状況を作るのも、一つのテクニックだろうに。それが上手だったら、おまけとかつくかも知れないのに。
両手を挙げながら、この素人強盗をなんとかやっつけてやろうと、僕は考える。
ここが暗いせいか、ちょい先の市を通る人からは見えないみたいだ。
ならば。
僕はゆっくりと目を閉じると、呼吸をあの領域までコントロールする。
「早くしろっ!なんだ!?目なんか閉じやがって、観念したっつうのか!?」
完了。
僕は融けた。
この場に、この闇に、この乾いた空気に。
「!?」
素人強盗は、突然の事で目を丸くしている。自業自得、というものだね。
それでも尚、持ち続けている銃のグリップを、その右手ごと一気に掴み捻りあげ、仰向けの形で体勢が崩れたところに、開いている腕で水月に肘を打ち込む。
「がっ!!」
そのまま地面に倒れこみ、口からよだれを出しながらうずくまる素人強盗。手加減はしてあるから、まあ、大丈夫だろう。
「本当は、命取られたって文句言えない仕事なんですから、諦めた方が良いですよ。
お兄さんは向いてないって、その類のお仕事。」
これだけ嫌みっぽく毒吐いておけば、もうやらないだろう。相手が僕だから、まだ死んでないって事は、事実だと思う。
とりあえず、弾丸だけは没収して置く。
いくら素人強盗でも、この街では銃は持っていないと危険だ。形だけでも、いくらかは、安全になると思う。
まだ呻いてる素人強盗を後ろに、僕は目の前の明るい通りを目指す。
急に世界が変わった。
そんな気さえする程、この市は賑やかで明るい。
この街にこれだけ人がいるなんて。統計でみる人数と、実際の生の人間を見ての人数では、受ける感じが違う。
簡単な作りのテントや、布を敷き木箱を棚代わりにしたような、そんな露店が、長さ200メートル位の路地に100店近く出ている。
僕は人の生(せい)の圧力に、少し圧倒されていた。
「あれ、アスキ、ここで何してるんだい?」
振り返るとリュグマンさんが、大きい紙袋いっぱいの缶を持って立っている。
「ん?ミラは一緒じゃないのかい?」
さて、と。どう言おうか?
「で、後ろの人、知り合い?」
後ろ?
振り返ったら、さっきの素人強盗がぼーっと立っている。ひつこいな、リヴェンジ?
口が開く。
「で、」
「デ?」
「弟子にして下さいっ!マスター!!」
・・・・・・・・・。
まあ、無い話じゃないけど、
「はあっ!?」だ。
人生は奇怪だ。
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