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ガンズ・パピー1-3-4

「ガンズ・パピー」



第一話、「Open Fire」



第三章、「K・K・K」(4)



 (S&W M64 2inch)

 スミスアンドウェッソンのリボルバー、カート式6連発ダブルアクション、銃身が短く携帯性に優れていて、隠し持って強盗するにはぴったりだ。

 まさにそれが、僕のコメカミに突き付けれられている。

 クーとクラックスは既に完了済みなので、あとはトリガーを牽き絞り、クランと鳴ったら、38口径の弾丸がこの素晴らしい性格と明晰な頭脳を台無しにする。それは、全人類にとって、今は何人いるか知らないけど、凄い損失だ。

 自分で言う分には、ほっといて欲しい。

「おら、早く出すもん出せよっ!」

 コメカミにぐりっと銃身が押し付けられる。

 カッチィーン、と来たぞ。

 強盗にだって、いくらかは礼儀ってものがあるんじゃないか?それに、出し易い状況を作るのも、一つのテクニックだろうに。それが上手だったら、おまけとかつくかも知れないのに。

 両手を挙げながら、この素人強盗をなんとかやっつけてやろうと、僕は考える。

 ここが暗いせいか、ちょい先の市を通る人からは見えないみたいだ。

 ならば。

 僕はゆっくりと目を閉じると、呼吸をあの領域までコントロールする。

「早くしろっ!なんだ!?目なんか閉じやがって、観念したっつうのか!?」



 完了。



 僕は融けた。

 この場に、この闇に、この乾いた空気に。

「!?」

 素人強盗は、突然の事で目を丸くしている。自業自得、というものだね。

 それでも尚、持ち続けている銃のグリップを、その右手ごと一気に掴み捻りあげ、仰向けの形で体勢が崩れたところに、開いている腕で水月に肘を打ち込む。

「がっ!!」

 そのまま地面に倒れこみ、口からよだれを出しながらうずくまる素人強盗。手加減はしてあるから、まあ、大丈夫だろう。

「本当は、命取られたって文句言えない仕事なんですから、諦めた方が良いですよ。

 お兄さんは向いてないって、その類のお仕事。」

 これだけ嫌みっぽく毒吐いておけば、もうやらないだろう。相手が僕だから、まだ死んでないって事は、事実だと思う。

 とりあえず、弾丸だけは没収して置く。

 いくら素人強盗でも、この街では銃は持っていないと危険だ。形だけでも、いくらかは、安全になると思う。

 まだ呻いてる素人強盗を後ろに、僕は目の前の明るい通りを目指す。

 急に世界が変わった。

 そんな気さえする程、この市は賑やかで明るい。

 この街にこれだけ人がいるなんて。統計でみる人数と、実際の生の人間を見ての人数では、受ける感じが違う。

 簡単な作りのテントや、布を敷き木箱を棚代わりにしたような、そんな露店が、長さ200メートル位の路地に100店近く出ている。

 僕は人の生(せい)の圧力に、少し圧倒されていた。



「あれ、アスキ、ここで何してるんだい?」

 振り返るとリュグマンさんが、大きい紙袋いっぱいの缶を持って立っている。

「ん?ミラは一緒じゃないのかい?」

 さて、と。どう言おうか?

「で、後ろの人、知り合い?」

 後ろ?

 振り返ったら、さっきの素人強盗がぼーっと立っている。ひつこいな、リヴェンジ?

 口が開く。

「で、」

「デ?」



「弟子にして下さいっ!マスター!!」



 ・・・・・・・・・。

 まあ、無い話じゃないけど、

「はあっ!?」だ。



 人生は奇怪だ。

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