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ガンズ・パピー1-1-4
- 2009-01-29T22:13:49
- れもら乃輔
「ガンズ・パピー」
第一話、「Open Fire」
第一章、「決闘代理人」(4)
ミラは変な奴だ。
「奴」と呼ぶのは、僕の内なる声だけで、口に出したら多分イタイ事になる。
そんな奴のために、僕はいま料理をしている。
火の付きの悪い野戦用のバーナーで、簡単なものを作ろうとしている。
なぜだろう?なんでこうなった?
そんな、自問自答を繰り返す哲学的な僕の後ろ、一応テーブルがあり、簡単なクロスも敷いてある。
チンチキ、チンチキと皿とフォークが音を立てている。
やっているのは、ミラだ。
「ラスキー!!可及的ハリアップ、ブレック朝飯!!!」
まぁた、よく解らない言葉を使う・・・・。
ラスキーとは、グレートピレネーズ犬の名前、ではなく、どうやら僕のことらしい。
「ルーキーで、アスキだから、ラスキー、キマリっ!!」
そんなことを言っていた。子供じゃないんだから、とも思う。
ミラの顔を初めて見た時は、ちょっと驚いた。
僕と同じか、もしくは下に見えたからだ。
髪は金色で、はね気味のショートボブに。僕よりも下に見えるのだから、顔の造りも幼く見える。だが、大きな瞳だけは、力強く灰青色に輝き、芯というか、気の強さを現していると思う。身長は160あるかないか、とにかくすばしっこい。
こういう所に、こういう仕事でいるせいか、服装は実用性重視で、味も素っ気も無いが、ちゃんとした物着れば、それなりに、まあ、かわいい部類の一端には、かするかも知れない。
今は、あの大きめのフードは衿の後ろに収まっている。
「ミラ、朝食のブレイクファスト(break fast)のファストは、断食という意味で、それを食事によって破るから、ブレイクファスト。」
リュグマンさんが、カップに入れたブラックコーヒーをすすりながら、自室から起きてきた。
やりやれやっと、言語の通じる人が舞台にあがった。
「あ、リュグマンさん、おはようござ・・・・!?」
190近い長身に真っ赤なシルクのパジャマ、まあ、この人ならアリだろう。僕が言葉を失ったのは、カップを持った手の反対の手で、大事そうに抱えられたテディベアだ。
かなりアンティークが入っている。・・いい仕事、じゃなくて!!
同じ、パジャマが、着せられている。
「ジム!リュグマン!!リヒテンシュタイン!!」
ミラが、ミラが、なに?
「ジム。ミラ、アスキ。」
じむぅ?リヒテンシュタイン??
僕の目に浮かぶ、虚空が見えたのだろう、リュグマンさんが説明してくれた。
「ミラによるとグッ・モーニンの略、だそうだよ。あと、リヒテンシュタインは彼。」
そういって、自分よりも先に椅子に座らせ、リュグマンさんもその隣に座る。そして、何事もなかったように新聞に目を通す。
混濁、鎮静、諦観、妥協、受容。
そして僕は、また一つ、大人になった。
「・・・じむ。」
振り返ると、料理を続ける。
ここは、元学校だった建物だそうだ。
いま、僕らが集まっているのは、科学室。の跡。
だから、無機質な感じがするのかも知れない。
この街は、八割が決闘代理人で残り一割が、政府役人、最後の残りが商人だ。
ミラ達に聞いてわかった事(といっても、意味がわかる事を話してくれたのはリュグマンさんだが)は、一人で依頼、つまり決闘を行うことは難しいということだ。
複数の代理人同士で、決闘を行う事もあり、そのために大抵はチームを組むそうだ。
依頼内容が一人の時は一人で、チームの時はチームでと、幅広くやれるので、そっちの方がいいかも知れない。
それに、僕はこの街やルールについて何も知らない。
誰かと一緒に組むのも悪くないと思った。
だから、リュグマンさんに話を持ちかけられた時は、すぐに承諾した。
その結果が、今の料理番のお仕事の始まりだ。
まあ、昨日の今日だから、これも仕方ないのかも知れないな。
まだ、僕の実力、真の実力を、見せる機会が無いんだから。
そんな事を思って、ニヤニヤしてしまった。
「ラスキー、変っ!」
「後遺症かな・・?」
よ、よりによって、この二人に、こんな事言われなきゃならないとは・・・・・。
人生は奇怪だ。
この二人も。
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