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ガンズ・パピー1-1-2
- 2009-01-29T22:11:18
- れもら乃輔
「ガンズ・パピー」
第一話「Open Fire」
第一章、「決闘代理人」(2)。
「ハウス」。
一見すると、普通の平屋建ての事務所のようだ。
しかし、周囲に徘徊する人たちが、不穏の極地だ。
なにも、むき身で軽機関銃ぶら下げて歩かなくても、と思う。
いかにも、の風体の厳ついセンパイ達が、新参の僕を品定めするように睨みつける。
苦手なのだ。こういうのは。
ナイフでお手玉を見せてくれる陽気な人もいたが、目の焦点が合っていなかったことには、触れない方がいいと思う。
まあ、皆さんに比べれば僕は小僧だし、まだ身なりも綺麗なままなので、ナメ易いのだろう。
なんとか、いざこざにならないように、今にも噛みついてくるような視線をかわし、ドアの前へとたどり着いた。
きしんだ音を立てて、そおっと汚れたガラスのドアを押す。
「あの、今日来たばかりなんですが。」
おそるおそる言ってみる。
なにせ、周囲が周囲だから。
・・・・・・・・・・・。
誰もいない。
反応はなく、僕は肩から背負った荷物を、手近のスプリングの飛び出たソファに置くと、ゆっくりと途方にくれた。
仕方なく、見渡す。
中は意外に綺麗に掃除されていて、大きな時代がかった木製のカウンターなんかは、古いホテルといった感じだ。
天井には大きな羽の扇風機が、のっそりと廻っている。
「こまったな・・・。」
独りごちる。
「ねえ、キミ、ルーキー?フリー??」
突然、横から声がした。
「!?!?!?」
驚いて急いで飛び除けると、僕の荷物に手を突っ込んでいる人がいる。
「な・・・、だ・・・・!?」
困惑の余り、僕がおたおたしていると、その人物は軍用のパーカーを頭からすっぽり被ったまま、折角もらったビーフジャーキーを、袋半分まとめてごっそり口に詰め込んだ。
「それ、僕のだけど。」
相手がどういう人なのか、解らないので強く云えない。
って、ドロボウじゃないか・・・?
ドロボウだよ、ドロボウ。
財産権の侵害だ。
「マハマハ、ハアキイホハ、フヒヒフウフウヒホハフホホホハエイアウホオ。」
「まあまあ、ジャーキーとは、口にする勇気のある者の為にあるもの。だって!?」
うんうん、と大きく首を振るドロボウ。
なんという適当な言い逃れ方だ。それも、僕に翻訳させるとは。
僕はツカツカと歩み寄ると、ジャーキーをさっと、取り返え・・・・せない。
小癪にもドロボウは、僕の伸ばした手をかわす。
「それは!僕のだ!返して!もらうよ!!」
ことごとくかわされる。
ああ、こんなんで、僕はこの先やってゆけるのだろうか?
ひらりと跳んだドロボウが、手を着いたもの。
僕の荷物だ。
長い袋。
あの中には。
突然、頭の中がカアッとして、また、意識が飛んでしまった。
目が霞む。
やっと、体の感覚が戻ってきた。
どうやら僕はうつぶせになっているようだ。
ゆっくりと体を起こす。
床に手を着く。
ふに。
ヤハラカイ・・・・・。
テンプルとチンと人中と天頂と、顔中のあらゆる急所に猛烈熾烈強烈な打撃を浴びて、僕はまた、意識が飛んだ。
正確には、飛ばされた。
ノックアウトだ。
「お約束」とはなんだろう?薄れゆく意識の中で、それだけが引っかかる。
人生は奇怪だ。
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