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ガンズ・パピー1-1-1

「ガンズ・パピー」

第一話「Open Fire」



第一章、「決闘代理人」(1)。



 決闘という、なんとも古めかしく血生臭い習慣が、大手を振って復帰したのは、まあ、当然の事態だった。

 と思うぜ、オレなんかに言わせればよ。

 ようやく人間は、自分個人の力で何とかしようという、野生の血に目覚めたというわけだ。

 欲しけりゃ戦え、守りたければ闘え。

 しかし、どうしたって、そういうのが苦手というか出来ない連中もいる。

 か弱い女子供や、老人、それに大金持ち様とかだ。

 そこでだ、お上は考えたわけだ。

 それよか前に手ぇだした、鼻の利く連中も多かったがな。

 そう、代理人制度よ。

 決闘代理人。

 依頼主の権利と正義を賭けて戦う、喧嘩好きのバカ野郎さ。

 規定の報酬でも、そこそこなもんさ。

 ま、死ぬこともあるがな。

 それでも、こんな腐った世の中じゃ、すっきり死ねていいかも知んねぇぜ。

 第一、大儀のために死ぬってのが、いいな。お前ぇ、見たことあるか、マカロニウェスタンとか。カート・コバーンに、イーストウッド、カァーーーーッ!!!ああいうのが本物だなっ!おいっ!?



 おい、と聞かれても、僕は曖昧な作り笑いでその場をかわすのが精一杯だった。

 しかし、この人、本当に政府の人なんだろうか?

 テンガロンハットに、拍車のついたウェスタンブーツ。僕と話している間も、噛みタバコをくちゃくちゃと行儀が悪い。

 この人にとっては、ここは天職なんだろう。

 人生とは奇怪だ。

 こうして僕は、「決闘代理人」としてこの街に入った。

 変な金属性のバッジを、決闘代理人の証として、彼の保安官殿からもらった。

 実際に、例に「保安官殿」と、渡される際に言ってみたら、「よせやい。」と言いつつも、満更ではないらしく、ビーフジャーキーを一袋くれた。

 悪い人ではなさそうだ。食べ物をくれる人は良い人だ。

 自分の好物を分けてくれる人は、尚更だ。

 鈍い銀色に光るそのバッジには、ダイスと天秤と剣が彫り込まれている。

 ダイスは運を。天秤は公平を。剣は正義を。

 そんな所だろう。案外まともだ。

 僕の名前が彫られている。

 Aski

 アスキ、それが僕の名前だ。

 「明日来」と「漢字」では書くらしいが、それを使っていた国はもう無いので、使わない方が伝わる。

 ここには、闘うためにやってきた。

 そう、育ったから。

 そのための武器も持ってきた。

 早速にも一働きしたいので、僕は依頼を受けるために、「ハウス」と呼ばれているらしい、施設へと向かった。

 道は、ジャーキーをくれる際に教えてもらった。

 途中のビル、いや、元ビルのコンクリートの残骸には、余すところなく弾痕がある。

 風に乗って漂う香りは、硝煙のものだ。

 C4の匂いもある。

 空の薬きょうが、コロカラと転がる。

 戦場だ。この街は戦場だ。

 人気のない街で、そこには黒山の人だかりが出来ていて、すぐにわかった。

 皆、殺気だっていて、重装備だ。

 彼らも僕と同じなのだ。

 そして、彼女にもそこで出会う羽目になってしまった。



 人生は奇怪だ。
2001年ごろドリキャスで書いてたの。稚拙だけども勢いはあったかも。

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