67

発掘プロット練習11

アクション・ファンタジー・シリアス



主人公の現在:節度

主人公の近い未来:意志の逆

主人公の過去:慈愛

援助者:至誠

敵対者:誓約
 
結末:調和


 主人公、シャイデは密命を受けて旅をする騎士。

 あくまで機密を重視する道程なので、普通の遍歴の騎士として目立たぬように振舞っている。(節度)

 しかし、旅の途中では悪事を目にしてしまいどうしても手を出さざるを得ない場合に遭遇する。育ちの良さが災いする。(慈愛)しかし、相手が剣を抜いてもシャイデが剣を抜く事は決してない。

 目立たぬ一人旅のはずなのだが、同行者が宿場ごとに日を追うごとに増えてゆき、なかなか目立つ存在になってしまう。(意思の逆)

 裕福な貴族の娘の冒険旅(お供付き)や遍歴の老僧侶、理論一辺倒の魔法学者、はねっ返りの盗賊娘などなど。

 これにより今までは目立たなかったから、逃れていた敵の追っ手にも気付かれ襲われる。

 自分ひとりなら切り抜けられる所なのだが、同行者を庇ってのそれはとても危険な道行だった。少しずつ傷を負ってゆくシャイデ。

 それまでは単独で襲ってきていた敵が目的地に近づくにつれ、一団と化し襲ってくるようになった。シャイデはかえって危険だからもう自分とは離れるようにと一団に告げ、早朝彼らが眠りに就いている間に一人旅立ってしまう。

 シャイデが帯びていた密命とは若き王の戴冠式に使われるための新しい剣を届けるという役目だった。この若き君主となる王とは、見習い時代にともに修行した間柄であり、本来ならば王家とはかなりの遠縁なのだが、王家に降りかかった度重なる“不幸”により、本人も知らない血筋が表に引きずり出された格好だ。

 これには、不幸の元凶も戸惑ったらしく、さっそく色々な不幸が若き継承者に襲い掛かったが、これまでのぬるま湯で育った王家の血とは明らかに違う為にてこずっていた。そして、戴冠式の日が近づき、これを受けさせてしまっては厄介になるので、それまであった王家の剣を血で汚し、新しい剣を使わなければならなくなるように仕向けた。

 宮廷内では、新しい王の力を見て、これまでの悪の跋扈に対して立ち向かおうと勢力が少しづつではあるが立ち上がってきていた。

 それゆえにシャイデが無事この剣を届ける事がこの国の命運にも関わる大事だった。

 敵の宰相は力と宗教に拠る独裁政治を狙っていて、淫嗣邪教悪魔崇拝により(誓約)させた熱狂的な暗殺者集団をシャイデの元に次々と送り込んでいたが、シャイデが王都に近づいているとの報告を受け、ここに一個軍団を率いて迎え撃つ作戦に出た。

 王都に程近い森の中の開けた一角で、シャイデは宰相軍の待ち伏せ攻撃を受ける。

 命に代えても剣を届けようと進むシャイデだが、多勢に無勢、徐々に追い込まれてゆく。

 遂に捕えられたシャイデは、軍団を自ら率いて出ていた宰相の前に引きずり出される。

 そして、勝利の歪んだ笑みを浮かべながら宰相がその王家の新しい宝剣を部下に命じて鞘から引き抜かせる。すると突然爆音とともに鞘から炎が噴出し、上空に赤い火の玉が揚がる。その光を切っ掛けにして、角笛の音が鳴り響き宰相軍の背後から、若き王の指揮する新王国軍が現れる。

 シャイデは囮だった。

 宮廷内で戦争が起これば城下が無事ではすまないと考えた若き王とその勢力は宰相達が主力だけを従えて王宮を離れる機会を狙っていた。新しい宝剣よりも何よりも悪の排除が先であると考えていたので、本当の新しい宝剣は完成途中だった。

 無論シャイデは死ぬ覚悟だったが、邪教の薬を飲まされ宰相に人質として取られてしまう。

 戦闘は若き王の軍勢が押していて、宰相に迫るが、シャイデを盾にされ、攻撃の手が鈍る。するとそこに王宮に残っていた宰相軍の残りが現れ若き王の軍勢は挟撃されてしまう。

 朦朧とした意識の中シャイデは、自らの命を絶とうと傍らに横たわる兵士の死体が立て掛けた剣の切っ先に、捕えられている一瞬の隙を突いて喉を突き出す。

 が、シャイデは死ねなかった。

 あの、盗賊の娘に体を支えられていた。

 娘が口笛を高らかに吹くと、樹の梢から矢が降り注ぎ盗賊が大挙して宰相軍に襲い掛かる。その次には豪華な鎧に包まれた騎兵の一団がそれに加わり、それを指揮する馬車の中には例の貴族の娘の姿があった。
この予想外の援軍に押される形になった宰相軍は禁断の秘薬を飲み干し、尋常ならざる力で最後の抵抗を試みる。押されるシャイデ達の軍勢。

 その時急に雨が降り出す。緑色の雨だ。これを浴びた宰相の薬を飲んだ兵士たちは次々と倒れてしまう。シャイデ達は何ともない。

 それを高台から使い魔の梟を従えた魔法学者が見守る。

 いよいよ最後と見た宰相は、まだ息のある者達を次々と自らの手で殺し、その魂を悪魔への捧げ物として、その悪魔を呼び出そうとする。

 地面が割れ、地の底から硫黄の煙とともにおぞましい腕が現れる。

 必死にその腕と応戦するシャイデ達、若き王の持つ古い宝剣はやはり血で穢れてしまった分効き目は薄い。魔法学者も駆けつけ応戦するが、なかなか効き目はない。

 徐々にその身を乗り出そうとする悪魔と、高らかに狂った笑い声を上げる宰相。

 シャイデは混乱する戦場のなかで、かの老僧侶の姿を見つけ、彼を庇い倒れてしまう。

 王が倒れたシャイデの元に駆けつける。シャイデの体からは滝のように血が流れつづけ、王の持つ剣を朱に染める。

 王は老僧侶に治癒の祈祷を頼むが、老僧侶はただシャイデの目を見つめるだけだ。シャイデが何かに気付いたように頷くと、老僧侶は治癒とは違う祈祷を紡ぐ。

 シャイデの血による祝福の祈祷だ。

 それまで、刃が毀れていた宝剣が軽くなり、熱と光を帯びる。

 その剣により肩口まで出ていた悪魔に多大な一撃を加えると、咆哮をあげながら悪魔の腕は地の底に戻って行き、最後に宰相の体を掴んだまま闇へと消えた。

 シャイデが出会った人たちは全て隣国の間諜などだった。

 新しい王が出来そうだと知り、その王の人柄やそれに従う者達などを調べ、同盟を結ぶべきか、この革命に力を貸すべきか調べるためだった。

 その結果、新しい王の誕生には隣国やその他の勢力として歓迎する事で一致したのだった。それゆえの援軍だった。

 盗賊の娘と思われていたのは、傭兵団の一員で、貴族の娘は隣国の姫、魔法学者は魔法結社の目、老僧侶は教国の司教だった。

 新しい王の戴冠式、そこには赤錆びた一振りの剣が使われていた。

 平穏に満ちた後の世にこの剣には、真に国を民を思う人間の血が触れた時に、邪を払う力が宿るという伝説が伝わっている。(調和)

END



所要時間・1時間弱。 オーソドックスな話にまとまったかな。本編を書くとしたらそれぞれとの旅の道行を中心になるだろうか。

[mente]

作品の感想を投稿、閲覧する -> [reply]