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発掘プロット練習10

サイコ・アクション・クライムサスペンス

主人公の現在:結合の逆

主人公の近い未来:信頼の逆

主人公の過去:勇気の逆

援助者:寛容の逆

敵対者:厳格の逆

結末:治癒



 主人公ヌークスは私立探偵で不眠症だ。不眠症だからと言って日常生活が出来ないわけではないが、感情的な部分は日を追うごとに死んでいっている。元は警官だったのだが、当初は夜勤にも都合が良いと思っていた不眠症は、感情の死の進行と共に正義感と言う曖昧な職業意識も奪ってしまい、わざわざ警察に勤める理由を見失い遂には退職した。(結合の逆)

 しかし、金銭は必要なので警官の経験を生かし私立探偵を始める。浮気調査の夜通しの見張りの方がつまらない深夜テレビで時間をつぶすよりは、外の空気を吸えるだけほんの少しだけましだからだ。

 そんな仕事の最中、死体を発見してしまう。それはスーツを着た成人男性で明らかに他殺体だった。

 それだけならまだありふれた事なのだが、死ぬまでに相当逃げ回ったらしく、血の跡が点々と続き、留めが刺されたのは恐らくはそのままほおっておいてもピザよりも早く死神が到着する状態にまで被害者が追い込まれてからだろう。

 この状態を見たヌークスは、当初ギャングの抗争かと思い、面倒だが一応は知り合いの警官に連絡して現場を去る。

 第一発見者を疑えの鉄則どおり、ヌークスは翌日自分の勤めていた警察署に呼ばれ、ありきたりの事情聴取に応じる、そこで元同僚の担当刑事から事件のあらましをなりゆきで聞くことになる。今回の被害者は恐らく狩られて死んだのだろうと。

 まず生体反応から見ての一発目の弾丸は、被害者の腕に残っていて急所は外れていた。この弾丸がクセモノで動物の研究に使う空気銃の弾丸のようなもので、そこにはビーコンが埋め込まれていて追跡できるようになっているものだと言う。被害者は普通の妻子あるビジネスマンで犯罪に巻き込まれるような人物ではないと言う事だった。

 ヌークスは、自分のアリバイを一方的に主張するとさっさと警察署を後にする。大抵こういうイカレタ犯人はイカレタFBIの出すプロファイルに引っかかる確率が高いからだ。なぜなら、すでに連中はイカレテいるから。

 その日も浮気調査の続きをするために現場に向かう途中、地下鉄のホームで老人から金を脅し取ろうとしている悪ガキ共を見つける。食べるものにも困るほど金が無いから、と言うわけではなく、いわゆる悪のために悪を成すタイプの連中そうだった。面倒な警察の取り調べなどに付き合い、久々に腹が立っていたヌークスは悪ガキ共で憂さを晴らす。

 そして、その日の深夜ヌークスは浮気調査を終えた帰り、狙撃される。

 自分の腕に出来た傷口と今日写真で見た被害者の傷口は同じ。ヤバイと思い物陰に隠れようとしたヌークスを次々と弾丸が襲う。消音装置付きのもので狙われているのか銃声は聞こえない。暫く弾丸が飛んでくるのが途切れたのでヌークスは弾丸の飛んできた方向から割り出したビルの屋上へと向かうと、そこには案の定サイレンサー付きの特製のライフル銃が落ちていた。それを拾うと同時に、ライトが照らされ二人の警官に現場を抑えられる。匿名の電話があり、到着したのだと言う。ヌークスのアリバイについても、浮気調査の張り込みは一人で行うわけだから、それの証明は誰にも出来ないし、よしんばその調査相手の行動で時間の証明ができるといっても、だれが自分の事を尾けていた人物のために莫大な慰謝料の証拠となることを証言するだろうか。

 その時、警官二人が何処かからの狙撃で倒れる。ヌークスは咄嗟にその場を逃げ出す。

 翌日、新聞やニュースでは連続殺人犯の重要容疑者の一人としてヌークスの写真が公表されていた。FBIのプロファイリングでは、主犯はもっと別のタイプだが、金で雇われたりなどでは、モラルの低いヌークスならやりかねないからだそうだ。

 不眠症で寝なくても良いヌークスにとって、逃亡に関する困難は普通の人間に較べれば半分であったがきつい事には違いなかった。

 金の持ち合わせはいつもと同じくそれほどなかったので、銀行にも寄れない身のヌークスは仕方なく行きずりの相手に強引に無期限に借りる手段に出る。適当に選んだその相手が、警官時代の同僚で丁度ヌークスが辞めるのと同じ頃に引退した鑑識の警官だった。かなり厳しい人物で通っていて、上の政治的な判断などことごとく無視して捜査するので出世からは在任中一切縁がなかった人物だ。(寛容の逆)

 その鑑識はヌークスに厳しい事を言いつつも、ヌークスが示した傷口からビーコンを取り出すと、ヌークスの言う事を信じるようになる。

 そしてそのビーコンは、狩猟用のものとは違いある兵器も手がける大企業が犯罪者の追跡用に開発して警察に売り込んで来た物だったという話をヌークスにする。

 それなら警察がすぐに販売元を、とは行かず、その計画は人権団体から待ったがかかって今議会で導入について審議なのだという。つまり市場には出回るはずのない物なのだ。

 その企業か警察の関係者から流れなければ。追跡装置も特別なものだから、追えばすぐに容疑者は出るはずなのに、なぜかニュースではヌークスのことばかり扱われていて、しまいには単独犯の可能性まで言及されるようになっていた。

 どうやら警察もその企業も丁度いいヌークスが罪を被って死んでしまうのが良いと考えたようで、ヌークスが匿われていた元鑑識の家に警察の捜査が入る。例のビーコン用の探査機を持って。そこで老鑑識は気付く。ヌークスがビーコンを入れていることを知っているのは、ヌークスか自分か、真犯人がいてそいつがヌークスを撃った事を知っている連中だけだと。

 それを問い詰めると、老鑑識は殴られて連行されてしまう。その様子を一足先に逃げ出して見守るヌークス。老鑑識には何が起こっても構わずに遠くへ逃げろとは言われていたが。

 ヌークスの不眠の原因は相棒の死にあった。とても仲が良く、家族ぐるみの付き合いだった。深夜のパトロール中、駐車した車の中で男女の喧嘩を目撃した相棒は眠ってしまったヌークスを起こさないように、規則に反し一人でその車に向かっていった。そして、逆上した男に撃たれた。その銃声でヌークスは目覚めた。


それから、眠るのが恐くなった。眠れなかった。眠れなくなった。

 老鑑識が取り出してくれたビーコンには、老鑑識の手によって新しくスイッチがつけられていて、これをつければ連中はヌークスの位置を探し出せるはずだ。

 その頃捕まった老鑑識は、ある企業の工場に連れて来られていた。ヌークスによって殺された犠牲者となるためだ。それには同じ手口で殺されるのが一番わかりやすい。

 ビーコンを撃たれた後、老鑑識は人の気配がなくなったことに気付き目隠しを外す。その瞬間に足元に弾丸が撃ち込まれ、これが狩りの始まりである事を知らされる。走る老鑑識。

 ヌークスは警官時代からの知り合いの盗品バイヤーから銃と軍用のソナーを買う。ついでにビーコンから出る周波数も検出させて、それに合うように細工もさせる。自分を犯人に仕立て上げるのと口封じには恐らく同じ手口を使うだろうと踏んだからだ。それならすぐには死なない。盗品バイヤーに殺人犯と言われている自分が恐くないのか?とヌークスは聴くが、警官のあんたの方が恐いとうそぶかれる。

 こうして、企業の工場に到達したヌークスは、逃げ回る老鑑識をすぐにも助けたい気持ちを抑えながら、老鑑識に次々に当たる弾丸の角度から撃っている連中を探す。

 そして一人を捕らえると、地下鉄で老人から金を脅し取ろうとしていた悪ガキの一人だった。

 自分達は未成年だから、金持ちだから、良い弁護士がついて、刑も軽くて、箔が付いて、女にも自慢できて、そんな理由を、何処かで聞いたような胸がむかつく言葉を吐く子供たち。それでもヌークスに子供は殺せない、撃たれながらも銃を下ろせと子供達に命令する。

 そこに、見張りをしていたのだろう、明らかにプロの挙動の警備員がやってくる。

 子供達は、その警備員に、以前と同じようにヌークスを殺せと命令する。

 父が、会社が、金が。

 警備員は、子供達とヌークスを見比べ、一瞬子供達に微笑むと子供達を躊躇わずに撃つ。

 会社は、父親ごとお前達を捨てたのだと告げる警備員。

 そして、ヌークスに狙いをつけ、自分がヒーロー役になると声高に宣言する警備員。

 その宣言を止めたのは、老鑑識の手に握られた、子供達が撃たれた拍子に落とした銃だった。

 撃たれて大量の血液が流れ出たヌークスは眠りへと誘われていった。
(治癒)



所要時間。恐らく50分。かかりすぎー。もう少し不眠症の部分を話の筋と絡めていければなあ。要勉強。ちっともサイコじゃなかったし。

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