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発掘プロット練習7

歴史・サイコ・ホラー

主人公の現在:結合の逆

主人公の近い未来:節度

主人公の過去:善良

援助者:誓約

敵対者:信頼

結末:勇気の逆



 主人公ラングは異端審問官として、中世ヨーロッパの暗黒の中に居た。

 魔女狩りは性質の悪い伝染病と同じように社会全体を覆い、欺瞞と恐怖を蔓延させていた。ある地方の教区で仲間達と慎ましく(善良)神に仕えていたラングだったが、その信仰心の高さと神学の知識の豊富さを買われ、バチカン付きの異端審問官と任命される。

 都市部では公然とされていた魔女狩りおよび異端審問は、地方の長閑な土地ではそれほど差し迫った問題ではなかった。それゆえ、強引な異端審問に疑問をもつ仲間の修道士達から、物理的なものと同時に心理的にも距離が段々離れて行っていた(結合の逆)。

 ラング自身も、毎回行われる異端審問で、拷問で半ば正気を失った者達の告げる悪魔のステロタイプな禍禍しさには辟易しており、大いに疑問を持っていたが、枢機卿自らの旗頭で行われるこの異端審問に少しでも光を見出そうと苦しんでいた。

 そんな時、「本物の悪魔」が捕らえられたという話が伝わってくる。
文献にあるような、山羊の角を持つ、そう言った悪魔だという。

 しかも捕らえられる時のゴタゴタで既に何人かの聖職者や官吏が犠牲になっているという。

 危険が大きいと言う事で、ラングより位の高い審問官は次々とその仕事を下へ下へと送り、ラングの所まで回って来た。

 暗闇の審問室で、牢の鉄柵を挟み向かい合うラングと悪魔。

 悪臭は酷く、姿も獣の革に包まれてとても醜い。言葉は話せないようで、時々唸り声のようなものを挙げていたが、手の指などは人間の物だった。

 ラングは全ての生き物に神の加護があるものと信じて疑わない人物であったから、人を殺した悪魔にも慈愛をもって接しようとする。そうする事が神に仕える自分の使命であると信じていたからだ(誓約)。

 審問が続く中、何気なく口ずさんだ故郷の歌に、悪魔が反応する。

 そしてラングの優しさに触れ、徐々に人の言葉を話し出す。

 この悪魔、元は田舎の農夫だったが、その村では悪魔が現れていた。最初は家畜がそしてしまいには人々がさらわれ無残に殺されていた。村人達が警戒を続ける中、農夫は荘園でそこの領主でもある高位の僧が行う、恐ろしい行為を目撃してしまう。それを官吏に報告するものの、官吏は動かず、それを覚られたかのように農夫の恋人はさらわれ無残にも死体となって農夫の家で発見され、農夫の納屋では「悪魔に化ける衣」が発見される。

 以上のことを聴いたラングは、耳を疑うと同時に、異端審問官になって以来どこかで引っかかっていた疑問と真っ直ぐに向き合う事になる。
 我々が神の名のもとに行っているコレは間違いなのではないか?

 しかもその農夫の言っていた村とは、以前ラングが着いていた司教の荘園がある村だった。

 農夫の証言を包み隠さず、上に告げたラング。翌日ラングの元にその司教(信頼)が訪ねて来る。ラングは人が良いから、悪魔の妄言に同情してしまったのだ、全て忘れろと説得する。

 恩師の言葉に動揺するラング。そして、もう一度農夫に話を聞こうと牢を訪れるが、そこにはもう居ない。

 審問官の長直々の調べが急遽執り行われ、拷問の末にようやく先ほどラングに述べたのは、惑わせるための嘘であったと証言し、速やかなる慈悲「斬首刑」を望んだのだという。

 ラングは処刑が行われるという広場へと走る。

 殺せ!と神の子である民衆が叫ぶ中を掻き分けて前へと進む。

 ようやくたどり着いたとき、正義の裁きである斧は振り下ろされた。

 地上の裏切りと欺瞞と苦痛から開放された農夫の顔はとても穏やかだった。

 ラングは一連の事件から、異端審問官の職を降りる。それは教会内では出世はもう望めないと言う事であったが、そんなことはラングにとってもうどうでも良かった。

 自分の力の無さを痛感したラングは諸国へ遍歴の旅へと出る。(勇気の逆)

 半年後、あの農夫の村の外れ、ひっそりとした山の奥に二つの小さな墓標が建てられていた。

END



所要時間25分。

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